「お茶とお祝い事との関わりは…」

2008年01月07日

中国茶評論家・工藤佳治

――茶器の図柄は、縁起をかついで

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 「お正月気分」がいくら薄くなったとはいえ、日本ではまだまだ「お正月」は「お正月」である。「新たな年のスタート」といった特別な意味が残っている。

 中国は、「旧正月」で祝う習慣があるので、ビジネス社会でもせいぜい12月31日、1月1日が休みで(今年は12月30日が日曜日で、三連休も多かった)、1月2日から通常の仕事、といった様子である。繁華街も、1月1日だけが休みあるいは通常営業というのが多い。元日を挟んでの休暇は、アメリカなどと同じである。

 上海では、皆が集まるスポットでの大晦日から新年へのカウントダウン、1月1日午前0時に花火が上がり、爆竹が鳴り響くなどはあるものの、普通の休日の延長という感じである。むしろ「旧正月」は、以前の日本のお正月と同じように、旧正月元日を挟んで1週間近く、レストランなどを除いて全てが止まってしまう感がある。この期間にビジネスなどで訪問しても、あるいは観光などでも、目的を果たせないことになるので、注意する必要がある。

 よく「中国では、お茶はおめでたい時に何か特別な使われ方をするのでは?」という、期待をもった質問を受ける。知る限り、あまり祝い事と関わりはない。以前、文化人類学者が、お茶が「結納」の一部に使われていた、といった報告があった記憶があるが、そのくらいであろうか。

 薬としての機能、眠気覚ましとしての役割などから始まった「お茶を飲む」こと。唐代には、次第に日常的に飲むことが定着していったと考えられている。が、コーヒーが祝い事などに特別な意味を持たないのと同じように、お茶も中国では祝い事には特別の意味はもっていないと思われる。

 ところが、中国茶器には幸福を呼ぶ願いが込められた図柄が多く描かれている。

 一つは「桃」である。景徳鎮で、清代に粉彩という絵付けの技術が生まれ、グラデーションが可能になって、「桃」はそれ以前にも増して中国磁器の定番の図柄になった。濃い赤からピンク、そして黄色にグラデーションで描かれることから、桃は立体感が増し、質感が豊かになった。壺や皿などに多く描かれるのと同じくらい、茶器にもよく登場する。

 「桃」は美しいから描かれるだけではない。「長寿」の象徴として、おめでたいとされているからである。

 もう一つは、「蝠(蝙蝠=コウモリ)」である。外見から、日本人にとってはあまり好きになれない動物であるなどするが、中国では「幸福」の象徴として描かれている。「蝠」が「福」と同じ音なので、そうなったと言われる。

 だから、「桃」と「コウモリ」という日本では考えられないような取り合わせの図柄が、茶器にも多く描かれる。縁起をかついでいるわけだ。 「コウモリ」は、実際には黒ないし灰色のイメージであるが、赤、紅色で描かれることが多い。「紅」は、発音で同じ音に「洪」(大きい)があるので、それとかけている。つまり、「大きな福」。音合わせで、紅色で描かれる所以である。

 どの国の人も同じかと思うが、中国でも自分を含め、家族や周囲の人々の幸せ、繁栄を願い、縁起をかつぐことが多い。ちなみに、商売をしている店やレストランなどの入口でよく見かける、「福」の字の紙を逆さに貼っているのも、「福」が「倒」。「倒」は「到」と同じ音で、音合わせで「福が来る」ようにとの願いを込めて貼られている。

 では、日本の新年。中国の縁起のよい図柄で、お茶でも飲みますか。

 次回は、「おいしいお茶を決める要素で忘れられるもの」(予定)です。

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中国茶メモ

永春佛手(えいしゅんぶっしゅ・福建省)

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 お茶名で、めでたいイメージがあるものを探してみるが、なかなかない。その中で、思いついたのがこのお茶。「永春」は、福建省南部の地名。前に紹介した「安溪」のすぐ北になる。陳年の黒酢の産地でもある。

 「佛手」は、茶葉が仏の手のように大きいので、こう名づけられたとされる。半発酵のお茶(青茶・烏龍茶)の仲間で、隣接した安溪の「安溪鉄観音」に非常に近い味、香りが魅力だ。フローラルな香り、口の中に残る甘さが特徴のお茶である。

 焙煎の強いものもあるが、その場合は香ばしさが最初に訪れる。

 仏の手に例えられるように、おおらかさのあるお茶で、気軽に楽しめる。

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